1.えっ!室戸回り?
ピンポーン。AM07:57玄関チャイムに起こされた私は、すぐさま着替えて
外へ飛び出した。
待っていた哲ちゃんから意外な言葉「今日ね、室戸回りで行くから」。えっ、室戸回り?!昨日は木頭回りで行くって言ったのに・・・AM08:12そんな思いを乗せたまま車は出発。哲ちゃんは、和田島ニュータウンにある私の自宅から、地元の人しか知らない細い抜け道をすいすいとすり抜け国道55号線へでた。
ここから一気に伊野町まで行くのかと思われたが、カメラの電池を買いたいとい
う私の要望を受け入れてくれ、海南町のコンビニSPARで車を止めてくれた。
「このSPARは、高知から進出してきてるコンビニで、云々かんぬん」と哲ち
ゃん。さすが物知り哲ちゃん。でもその割には常識が・・・などと思いつつ私はリチウム電池とキリンラガー450ogボトル缶を買った。
さて、車は海南町を出て宍喰町を過ぎ、いよいよ高知県東洋町へ。「ちょっと寄ってく」と言って哲ちゃんはハンドルを左に切った。そこは、四国のサーフィンのメッカ生見海岸だった。
2.生見海岸にて
哲ちゃんは、車を道の脇に止めるとすぐ、カメラの準備をしている私を置いて一
人すたすたと海岸へ歩いていった。私が追いつくと、防波堤に寝そべっているビキ
ニ(下はショートパンツ)のお姉ちゃんを撮れとせがむ哲ちゃん。アングルが悪い
と私が言うと、「あのおっちゃんなんか真上からシャッター切ってたよ」とさらに
せがむ哲ちゃん。しかし、75−300oの望遠ズームで、しかも私の身長でどう
やって真上から撮れというのだ。そんなにビキニのお姉ちゃんが撮りたいのなら、
最初からカメラを用意して自分で撮れよと思いつつ、私はサーフィンをしている兄
ちゃんをカメラに収めた。
車をスタートさせてからもなおブツブツ言う哲ちゃんを無視して、私は、さっき
買ったキリンラガーのキャップを開けた。ここ東洋町から室戸まで、55号線は阿
南室戸海岸国定公園の海岸に沿って走っている。車窓の左に広がる美しい海岸線。
景色を堪能しながらさわやかな初夏の潮風を真っ赤な頬に浴び、ラガーをぐびりと
飲る私。ああ最高のドライブやなあ、運転してるのが哲ちゃんやのうてあの可愛い
○スのお姉ちゃんやったらどんなに素晴らしいことか、と思いつつ思わず右を見る
と、哲ちゃんは、午後の紅茶を左手に持ち、「こんな綺麗な景色は高速では見れな
いよ」と左に広がる海を見ながら言った。おいおい「ちょっと待って○レ○○ック
〜」いきなり天国から地獄へ突き落とされた。何と言っても、高速道路をバックす
るという離れ業をやってのける哲ちゃんである。哲ちゃんの助手席に座るのは、パ
ルケエスパーニャにあるインパーテッドコースター「ピレネー」に乗るよりも怖い
のだと言うことを、私は美しい景色に見とれて忘れていたのである。
3.岬巡らず及び日曜市にて
さっきの悪夢も覚め止まぬまま、哲ちゃんは50qオーバーで快調にとばす。も
うすぐ室戸岬だ。私が思わず「あなたーが・・・」と歌い出すと、横でも「あなたーが」と口ずさんでいた。私が一番を歌い終わったとき、「あっ、岬ショウトカットして近道するから」と哲ちゃんはハンドルを右に切り、車を市街地の方へ向けた。岬巡りのバスは・・・トンネルを抜け暫く走るとまた海が見えてきた。今度は太平洋だ。少し霞んでいた。
きらメッセ室戸という道の駅でトイレ休憩した。トイレを済ませて車の前で立っ
ていると、先に済ませて売店を回ってきた哲ちゃんが一言「なあんも無い」。再び
車は走り出す。
しかし、ここからは市街地で車も多く、今までのような快調な走りは出来なかっ
た。いらいらした哲ちゃんは隙あらば抜こうと、前のめりの姿勢で運転していた。
タイガースのキャンプ地の安芸市を過ぎ、南国市の手前で二車線になると、哲ちゃ
んは水を得た魚のように、右へ左へと遅い車を抜いていった。
やがて車は高知市に入った。お昼少し前だった。車が高知城の下の駐車場へ滑り込んだとき、時計は12時を少し回っていた。
車を降りると哲ちゃんは、「日曜市を一通り見てから食事にしようね」と言って
すたすたと歩いていく。右手には家から持って来た手提げの小さなクーラーバック
が握られていた。私は用意周到だなあと思いつつ、遅れまいと必死に付いていった
。高知の日曜市は有名である。野菜や果物漬け物などの食料品の他、日用雑貨や子
供の玩具、果ては植木や石に至るまで様々な屋台が軒を連ね、その狭い通路は買い
物客でごった返していた。哲ちゃんは、例の早足で人混みをかき分けどんどん先へ
進んでゆく。時々立ち止まっては私に、あれが馬路村のユズ酢だとか、これが四万
十川の海苔だとかいろいろ解説してくれた。
で結局端から端まで歩き回って、哲ちゃんは、2本500円の天然ワサビと、1
把100円のクレソンを買った。私は何も買わなかった。
雑居ビルの1階で食事をした。何だかよく分からないごじゃごじゃっとした所で
、小さな飲食店や食料品店が集まっていて、昔の屋台村のような所だった。私は、
せっかく高知に来たんだからと鰹のたたき定食(750円)を食べた。なかなか美
味しかった。哲ちゃんは、アジアンラーメン(500円)を食べた。
腹ごしらえが終わってさあ再出発。目指すは伊野町、ギャラリーコパ。
4.ギャラリーコパにて
ギャラリーコパに着いた。1時を少し回っていた。受付で入場料100円を支払い、エレベーターで二階の会場へ。時間のせいか、入場者は少なかった。土佐模型倶楽部(以下土佐模と略します)の会長森沢氏の姿はなかった。土佐模の会員の人に聞くと、未完成チームの人(以下未完成の人と略します。名前を聞きそびれましたすみません)と食事に行っているとのこと。私は、とりあえず持って来た作品(1/35レオパルド2A5と九四式軽装甲車)を展示させてもらうことにした。会員のK氏がAFVの展示スペースの一角を開けてくれた。作品を展示し終えると、私はカメラを取り出し、望遠ズームからマクロにレンズを取り替えて、まずAFVから取り始めた。その間哲ちゃんは、土佐模の会員の人と何やら話をしていたようだった。そうこうしているうちに、森沢氏と未完成の人が帰ってきた。森沢氏とは静岡HS以来二週間ぶりの再会だ。さすがに、いつものジャージと○所スリッパではなく
、ジーパンにスニーカーだった。
二人を見つけた哲ちゃんは、森沢氏とのあいさつもそこそこに、未完成の人に質
問した。「ねえ、どうやって来たの」。
すると未完成の人は「岡山から高速で来ました。ノンストップで二時間です」と答
えた。なおも「いくらかかるの」。と言う問いに「そうですねえ、往復で14,0
00円ぐらいでしょうか」と答えた。すると哲ちゃんは私に向かって「ボクに一万
四千円くれたら帰り高速で君の家までジャスト2時間で着けちゃる」と息巻いた。
私は即断った。(伊野ICから徳島ICまでの高速料金は3,900円である)
5.紙の博物館と仁淀川にて
伊野町は土佐和紙の発祥地である。仁淀川の澄んだ水と豊富な原材料そして優れ
た人材、町は和紙と共に発展してきた。そんな伊野町に来て紙の博物館を見ない手
はない。「僕は来る度に見てるから」という哲ちゃんに紙の博物館に案内してもら
った。紙の博物館は、ギャラリーコパより国道33号線を南に200メートルほど
行った所にある。入館料は、大人520円だが、ギャラリーコパが紙の博物館の別
館ということで、哲ちゃんがコパの受付のお姉さんと交渉して、割引券をもらって
くれたので、420円になった。哲ちゃんは「ボクは何度も来てるから」と言って
、玄関ホールから左側の部屋に入っていった。そこは和紙製品の即売コーナーだっ
た。どうもおかしい。さらに進むと4.現代の和紙という表示が見えた。そこで私
は、先をゆく哲ちゃんに「順路が間違ってませんか」と声をかけた。すると「あっ
そう」と言ってすたすたと玄関ホールに戻る哲ちゃん。向かって右側の部屋に入る
と、1.和紙の歴史というタイトルが掛かっていた。
紙の博物館を出てコパに帰る途中、哲ちゃんが「仁淀川を見てよう」と言った。
私はついでだと哲ちゃんの後について国道を横切り土手を上った。土手の上は涼し
かった。下の河原には大きな木があり、その木陰で若いアベックが抱き合っていた
。対岸では家族連れがキャンプを楽しんでいた。「これが日曜日の本来の過ごし方
なのよねえ」と哲ちゃんがつぶやいた。
6.さよならコパ
コパへ帰ってきたのは3時過ぎだった。お客さんがたくさん来ていた。顔見知り
のS本会員が私に近づいてきて「村上さん1/16ラジコンタイガーの音、聞いた
ことありますか」と言うので、私は「去年静岡で聞いたよ」と答えた。彼はこのキ
ットを手に入れたことが嬉しくてたまらず、タイガーを抱いているところを奥さん
に写真に撮ってもらったそうである。それを聞いて哲ちゃんが一言「けっ、スーツ
が3着買えらあ」。
「とにかく動かしてみましょう」とS本会員。虎の咆哮に会場中のお客さんの目
が釘付けになった。
そうこうしている間に閉会の時間が近づいてきた。私は自分の作品をさっさと片
づけた。手ぶらの哲ちゃんは「一つ持ってあげるよ」とS本会員の作品の入った箱
を持ち上げた。「あっ、すみません」とS本氏(彼は哲ちゃんの怖さを知らないの
か?)。森沢会長や会員の皆さん、そして友情出品していた当TMC会員で、ここ
から20分ほど西に行った所に住んでいる横田さんにあいさつして会場の外へ出た
。何事もなく(よかった)哲ちゃんがS本会員に箱を手渡した。
16:09ギャラリーコパを後にして・・・
さあ帰りはどんな冒険が待っているのであろうか・・・・・?
会場での写真はこちら
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